• 2015年2月13日

渡航の自由か生命保護か

渡航の自由か生命保護か

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ISIL(テロリスト集団)による日本人殺害事件。2名の方の命が無残にも奪われた衝撃は、現在でも続いています。政府の対応・自己責任論などの賛否両論が渦巻くなか、日本はいったいどう対応していくのか。今、それが問われていると思います。さて、その衝撃も冷めやらぬ中、またも一人の日本人がシリアに渡航しようとして問題になっています。

今回は、その是非について記事にしたいと思います。



旅券返納 写真家「あしき前例」

シリア渡航を計画し、旅券返納命令を受けたフリーカメラマン杉本祐一さん(58)が12日、東京都内で記者会見し、「あしき前例になる」と政府の対応をあらためて批判、命令取り消しを求める訴訟を起こす意思を示した。

「渡航の自由」と「生命の保護」のどちらを優先すべきか。識者からは「安倍政権にとって悩ましい問題だ」との指摘も出ている。杉本さんは難民キャンプを取材するため、2月下旬からトルコ経由でシリアに入る予定だった。しかし、過激派組織「ISIL」による事件を踏まえ、外務省が旅券法の生命保護規定に基づき返納を命じ、渡航を阻止した。

ジャーナリスト集団「アジアプレス」大阪事務所の石丸次郎代表は「取材場所やテーマは政府が規制するものではない。安全かどうかはジャーナリストが決めるものだ。」と、杉本さんを支援する考えを示す。一方、テロ対策に詳しい公共政策調査会の板橋功・研究室長は「現地に行けば、外見で日本人とすぐにわかってしまう。個人で出来る警備上の措置には限界があり、内戦下のシリアではISILに限らず、どこの組織に拘束されてもおかしくない。」と指摘する。

「返納命令は邦人保護の観点からは当然」と言い切る。

初めてとなる今回の返納命令は、首相官邸を中心に政府全体で検討した上での結論だった。政治評論家の小林吉弥さんは「安倍政権が邦人人質事件で万全の対応を取ったとは言い切れず、邦人が再び拘束されれば政権を左右する事態となる。

テロに屈しない姿勢を示し、日本人への敵対心が強まる中、命令を出さざる得なかったのだろう」と解説する。「ただ、過度に規制すると人権の問題が出てくる。政権にとっては悩ましい問題」と話す。訴訟になれば、憲法が保障する「渡航の自由」や「報道の自由」が争点になるとみられる。

同志社大学の松本哲治教授は「渡航の自由がどんな場合も制限されないと言い切れるか、というと難しい」と返納命令に一定の理解を示す。その一方で、「ジャーナリストがシリアに行かなければ、アサド政権やISILの流す情報だけになる。

紛争地の子供の姿など、重要な情報が遮断される恐れもある」との懸念も示す。その上で「シリア全土が日本人なら直ちに誘拐される状況にあるのか疑問はあるが、現地が危険だという政府の主張にもっともな点はある。事件から間もないタイミングで渡航しようとした現実もあり、杉本さんが勝訴するには、いくつものハードルがある」と語った。

中日新聞:社会11版 33面

 

様々な疑問

今回の事件は邦人二人が殺害された直後に問題となっている事案です。今回の事案は、賛否両論あると思います。「杉本さん頑張れ!」「サムライだ!」「男の中の男だ!」と称賛の声がある一方で、「自殺行為じゃない?」「あなたを助けるために他の誰かが犠牲になる」などの否定的な声もあります。

ちなみに、私は否定的な方です。何故このタイミングで、ISILのスパイやシンパがうようよいるシリアに渡航しようとしするのか?

が尚更気になります。

杉本氏の記者会見

 

「なぜこのタイミングで?」

私は、なぜこのタイミングわざわざ行こうとするのか理解に苦しみます。この事件がおきる前ならば、いくらでもシリアに入国できただろうと思うのですが・・・。二人の邦人が残忍な方法で殺害された直後に、渡航しようとするその意図がわかりません。

もう少し時期を考えてもよかったのではないでしょうか?

 

「なぜシリアに?」

それに、「難民キャンプを取材したい」とのことだが、なぜシリアに向かうのでしょうか?難民キャンプはシリアだけにあるわけではありません。周辺諸国のいくつかは難民を受けて入れています。比較的安全な周辺国の難民キャンプを選べば良かったのではないだろうか?と思います。

さらに腑に落ちないのは、なぜわざわざ「シリアに行く」と言ったのか、が疑問です。通常、戦場カメラマンなどは、取材源の秘匿の観点から行き先を隠して入国するものです。ですが、杉本さんはバカ正直に行き先を告げてしまっています。

戦場カメラマンを経験している人ならば、そんなことはすでに当たり前のはずですが・・・。

真相はどうなんでしょうか・・・。

 

「支配地域に行くつもりはありませんでした」

これについてもISILの支配地域は非常にあいまいなのが現実です。要するに国境のようにISILの支配地域は線引きがされているわけではありません。安全と思われる周辺国や難民キャンプの中にも、おそらくISILの関係者やスパイは大勢いるでしょう。

つまりは、絶対安全な場所などないのです。

もし仮に、杉本さんが捕まったとしたら、彼を助けるために、他の誰かの命を犠牲にしなければいけません。

 

記者会見の内容

下記は杉本さんが記者会見での内容になります。

杉本さんの記者会見の全文

 

簡略化

  • この20年間、パレスチナ、イラク、そしてシリアで写真を撮り続けてきた。
  • イスラム国の支配地域に行くつもりはありませんでした。
  • 外務省から「返納しない場合は逮捕する」と言われた。
  • 外務省から「どんな条件のもとでも、お返しすることはありません」と言われた。
  • 今後も20年間紛争地でやってきたことを継続してやっていきたい。
  • 本気で訴訟を起こすことを考えている。
  • 取材や渡航、表現の自由への制限については最高裁で最後まで闘うつもりです。

 

BLOGSでの反応

※BLOGSのコメントでは約80%が否定的な意見です。

※形式上、意見を抜粋しています。

  • 会見する必要あるのかな?
  • この時期にこういう事を率先して行うのは、単なる売名屋なんじゃないのかな?
  • ジャーナリストの血が騒いで、どうしても行きたい….もちろん自己責任は承知の上で。
  • 本気で行きたいなら、日本政府を出し抜いて出国出来るぐらい用心深く行動してくれ。
  • エントリーを読むと、杉本氏にも一理あるように思う。
  • 外務省が、逮捕を口にしたのであれば法的根拠の確認の上だろう
  • 海外のマスコミも、政府の対応に賛同しています。
  • この会見に何の意味があるのだろう。
  • 主題とはズレるけど、パスポートの「威力」って絶大なんだね。
  • アメリカでは旅券返納命令は当然でパスポートは政府の所有物だからとのこと。
  • 日本もパスポートは個人の所有物ではなく、国に所有権があるんですよね。
  • 能力の高いジャーナリストの取材を制限するという行為は日本の国益を害しかねない危険な行為であることは事実だと思う。
  • つい先日死亡が確認された米国人女性はシリア難民支援でISILの領域の外に居たと思われるんですが。
  • んー、やっぱり突っ込みどころ満載でとてもとても「がんばれ」と言えない状態です。

さて、これまで杉本氏によるパスポート返納問題を追ってきました。私は、政府の今回の対応は何ら間違っていないという立場に立っています。なぜなら、「生命の保護と権利は必ずしも同列ではない」と思うからです。

あなたはこの問題どう思いますか?