最近ではダウンロードできるPhotoshopのチュートリアルの書籍が多くなってきました。これらのチュートリアルは直接作りながら学習できるので、非常に効果的です。今回紹介する書籍もチュートリアルで学ぶことができます。また、数あるPhotsohopの書籍の中でも屈指のボリュームを誇る専門書でもあります。
今回はそんな数少ない日本語で読める専門書「フォトをアートにする魔法 Photoshopマスク&コンポジット」をレビューしたいと思います。
レビューする書籍の詳細情報
本書の詳細情報です。
項目 | 詳細情報 |
---|---|
チャプター数 | 13章 |
ページ数 | 648ページ |
出版社 | ボーンデジタル社 |
カラー | 全編カラー |
発売日 | 2013/12/18 |
サイズ | 2.5 × 18.2 × 25.7 cm |
新品価格 | 7,700~8,800円 |
中古価格 | 4,200円 |
※新品・中古価格は2017年10月時点のものです。
書籍の特徴
「フォトをアートにする魔法 Photoshopマスク&コンポジット」のざっくりした特徴は以下の通りです。
- データサンプル付き(サイトからダウンロード)
- チャプター形式の解説。
- 全編フルカラー。
- どちらかというと中~上級者向け。
- ディスク付属なし。
- とにかくボリュームがすごい。読み進めるのが大変。
- これぞ専門書といった感じ。
- 撮影の技法からコンポジションまでかなり詳細に学べる。
書籍の目次
「フォトをアートにする魔法 Photoshopマスク&コンポジット」の書籍は、全13のチャプターで構成されています。下記は本書の各チャプターですが、あまりにもボリュームが大きいので、かいつまんで箇条書きにしてあります。
参考程度に見ておいてください。
Chapter.1
- レイヤーの歴史
- 昔ながらの合成写真
- 20世紀の巨匠たち
Chapter.2
- インスピレーション
- 観察
- ブレインストーミングとコンセプト
- らくがきとスケッチ
Chapter.3
- 画像のプランニング
- 撮影時の検討事項と事前準備
- ロケーション撮影
Chapter.4
- 点光源
- 指向性の拡散光源
- フィルライトの重要性
Chapter.5
- 透視図法
- 焦点距離
- 俯瞰の視点
- パースの特定
Chapter.6
- 選択と範囲
- トーンとカラー
- 細かいディテールと複雑なエッジ
- 各種選択ツール
Chapter.7
- 選択範囲のメニュー
- 色域指定
- 境界線の調整
Chapter.8
- 様々なレイヤーの使い方
- スマートオブジェクトレイヤー
- 調整レイヤー
- ニュートラルレイヤー
Chapter.9
- 選択によるレイヤーマスク
- ペイントによるレイヤーマスク
- レイヤーマスクの基本操作と調整
Chapter.10
- チャンネルの使い方
- アルファチャンネルの使用
- アルファマスクの使用
- チャンネルマスクの調整
Chapter.11
- グリーンスクリーンとブルースクリーン
- 煙のマスキング
- 白、黒、グレーの背景
Chapter.12
- 画像とインスピレーション
- 美術館・ギャラリー
- 鏡面反射の実験
- テクスチャの実験
Chapter.13
- ラフコンポジットの手順
- 画像の特性のマッチング
- 立体感
- 影の作成
- リアリスティック・コンポジット
書籍レビュー
以下の4点について書籍のレビューをしていきます。なるべく良い点も悪い点もレビューしていきたいと思います。
- 目次は見やすいか
- ページは読みやすいか
- 文章と画像の構成は見やすいか
- チュートリアルは分かりやすいか
目次は見やすいか
まずは目次の見やすさをレビューしていきます。本書は非常にページ数が多いのですが、目次は見やすいように出来ています。「チャプター(章)> サブ見出し > ページのタイトル」の階層で表示されています。気になるチャプターから必要な情報がどのページにあるのか、すぐに分かるようになっています。
また、本の最後には「索引」があります。五十音からページを検索できるので、そちらを利用しても良いでしょう。
書籍によっては目次がすごく読みにくいものがあるのですが、こちらの書籍は問題ないでしょう。
ページは読みやすいか
ページの読みやすさに対するレビューです。文字がちょっと小さく感じますが、全体的に読みやすいと思います。重要な箇所には太字や(図5.26)などのように注釈が入れられているので、どこをみればすぐ分かるようになっています。
文章と文章の間隔も適度に空けられているので、読んでいて疲れることはありません。ただし、「アーティストのインタビュー」などのように文章のみで構成されたページもいくつかあります。これらのページはかなりの長文なので、ちょっと読みづらいと感じました。(すごく為になるけど…)
全体的には合格点だと思います。
文章と画像の構成は見やすいか
文章の画像の構成はどうなっているかレビューしていきます。どのページにも共通していることですが、ほとんどのページに画像が多用されています。画像を見てみると分かりますが、ほとんどのページは文章による説明と補足するための画像で構成されています。
下記のように作業の流れが分かるように、連続で画像で解説されているものもあります。また、重要な説明やポイントとなる箇所にはカラー付きで囲まれたエリアで表示されています。ここら辺も非常に丁寧に作られているので、安心して読むことができます。
特に読み進めていて、迷うようなことや理解できないようなページはありませんでした。
※あくまでも基本的な操作や知識があるという前提でのレビューです。
チュートリアル(解説)は分かりやすいか
本書にはダウンロード素材があり、それを使ってチュートリアルを進めていきます。下記のように、チュートリアルの完成図がまず始めにあり、それを作っていくための作業の流れを説明しています。画像には作業レイヤーの状態が分かるようになっています。
私は特に迷うようなことは無かったのですが、詳細な操作手順が記載されている訳ではありません。レイヤーマスクやクリッピングマスクなどの基本的な知識と操作が分からない状態だと途中で詰まるかもしれません。
また、注意すべき点がいくつかあります。
解説のために画像があるのは良いのですが、Photsohopの言語が「英語のまま」なので、解説画像も英語表記になっています。よってレイヤーも英語で表示されており、ちょっと見づらくなっています。画像の下に文章で解説されていますが、パッと見は分かりづらいなと思いました。文章をよく確認すれば、日本語の解説があるので大丈夫ですが、ちょっと注意が必要です。
初級者の方は、基本的な操作や知識はネットの情報を参照するか、基本操作の参考書などを用意しておくと安心して読み進めることができると思います。
評価と分析
「フォトをアートにする魔法 Photoshopマスク&コンポジット」の評価と分析は以下の通りです。
項目 | 評価 |
---|---|
ボリューム | 5 |
分かりやすさ | 5 |
読みやすさ | 4 |
価格 | 3 |
対象者 | 中 ~ 上級者 |
サンプルデータ | あり |
【Good】本書の良かった点
中級者以上の人なら間違いなく買って損はしないと思います。特にパース(視点や構図)、リアリティを追求するための観察、光の拡散と影の表現、撮影のテクニック、インスピレーションをカタチにするためのポイントなど、他の専門書に見られないような解説が多数収録されています。
特にパースは非常に参考になりました。「一点透視図法」・「二点透視図法」・「三点透視図法」など、オブジェクトをどのように配置したら効果的に見えるのかなどパースガイドを使いながら画像を交えてかなり詳細に解説されています。
これらの図法はおそらく美術学校などで学習するのかもしれませんが、独学では難しいですからね。それだけでもこの書籍を利用する価値は十二分にあると思います。
またチュートリアルに関しても、ダウンロード素材で進めることができるので、理解しやすくなっています。コンポジット(合成)の方法から、チャンネルを利用した方法まで幅広くテクニックを学ぶことができます。解説もかなり詳細に書かれているので、理解しやすいでしょう。
非常に大きなボリュームなので、一晩で読み進めることは困難ですが、気になる箇所や興味のある箇所のテクニックだけをかいつまんで学んでいくほうが効率よく学習できると思います。
【Bad】本書の悪かった点
本書はテクニックについての手順や方法はかなり詳細に記載されていますが、専門用語の解説はありません。アルファマスクやチャンネル、レイヤーマスク、クリッピングマスクマスクなどあらかじめ基本操作が分かっている前提で解説されています。
初級者の方は読み進めるのが困難だと思います。
また、一応チュートリアルで作りながら学ぶことができますが、これらの学習で作品が作れるようになる訳ではありません。あくまでのそのテクニックを使った説明とポイントを解説しているだけです。しかし自分の作品を作るためのヒントにはなるかもしれません。
あとは、価格がネックになりそうです。こちらの書籍は通常価格では8千円を超えます。私はそれだけの価値があると思っていますが、人によってはかなり悩む値段だと思います。悪い点はそれぐらいですかね…。
あとがき
今回「フォトをアートにする魔法 Photoshopマスク&コンポジット」の書籍をレビューしました。どの書籍にも大なり小なり欠点はありますが、この書籍に関しては、悪い点があまりみあたりませんでした。悪い点を必死に考えたんですがね…。
しいて言えば、初心者向きではないとうことでしょうか。それだけこの書籍が優良だということかもしれません。
かなり作り込まれた専門書であり、値段も相応に高いですが、キチンと読めばPhotoshopのテクニックが間違いなく向上すると思います。ビジネスでPhotsohopを使う人にとっても損はしない内容だと思います。
最後に、このレビューが参考になれば幸いです。