皆さんは、よくテレビを見ますか?私は滅多にテレビを見なくなりました。私の中では偏向報道を繰り返すテレビの時代は、終わりを迎えつつあります。そんな、私の主な情報ツールは「インターネット」「新聞各紙」です。
さて、今回は、巷で何かと話題をにぎわしている『五輪エンブレム 盗作疑惑』について書きたいと思います。
五輪エンブレム 問題のはじまり
事の発端は、五輪エンブレムを発表したことに始まります。コンペ形式の五輪エンブレムのデザインに選ばれたのは、デザイナーの佐野研二郎氏(43)のものです。いくつかの候補の中から、佐野研二郎氏のものが選ばれ、大々的に発表されました。
しかし、ほどなくして、ネット上である疑惑が持ち上がることに・・・。
『2020年の東京五輪の公式エンブレムが、ベルギーのリエージュ劇場のロゴに似ている・・・』
そう、盗作疑惑が持ち上がったのです。
はじめは、ネット上の誰かがささいなきっかけで見つけただけでした。しかし、この盗作疑惑は瞬く間にネット上で拡散され、やがてテレビでも報道されるようになります。
ですが、これは、ほんの始まりに過ぎませんでした。
盗作されたと主張しているリエージュ劇場とは
リエージュ劇場は1918年にベルギー国王が設立した国立のギナジウムが起源であり、現在も当時のベルギー国王が設立した劇場として知られる。また、劇場では芸術が非常に大切にされており、『リエージュ国際芸術祭』が毎年一ヶ月間に渡り独創的な芸術作品が上演されている。
リエージュ劇場の本館は歴史的建造物として登録されている。
また、本拠地から数百メートル離れた場所には一つ目の別館「フォンク」がある。可動式の客席を備えており、様々なジャンルや形態の上演を可能にしている。2013年に本館の敷地内に新しく建設された2つ目の別館には芸術作品上映のために近代的設備をもつ。大ホールと小ホールが用意され、その他に視覚芸術の展示スペースやレストラン・バー・書店などを備えている。
非常に豪華絢爛のリエージュ劇場の内部。
さすがは王族が創立した建物といった感じですね。今回の騒動では、このリエージュ劇場を直轄する王族の威信とプライドも関係しているようです。王族の方からしてみれば、リエージュ劇場の名を汚されることになりかねないからです。
写真出典:FORUMOPERA.COM
ベルギーのデザイナーの提訴
2020年東京五輪の公式エンブレムがベルギーのリエージュ劇場のロゴに似ていると指摘された問題で、ロゴをデザインした同国在住のデザイナー、オリビエ・ドビ氏は6日、国際オリンピック委員会(IOC)に対し、エンブレムの使用差し止めを求める訴訟を10日にも起こす意向を表明した。
この問題では、エンブレムをデザインしたアートディレクター、佐野研二郎さんが5日の記者会見でドビ氏が主張する「盗用」疑惑を「事実無根」と否定。IOCも商標登録時に確認するなどして「問題はない」との認識を示している。ドビ氏は6日発表の声明で、佐野さんの説明について制作過程などに関する説明が十分ではなく、「納得できるものではない」と主張。
10日を念頭に、可能な限り早急に訴状などの書類を準備するとした。提訴先はベルギー国内の裁判所になる。ドビ氏は7月31日、IOCと日本オリンピック委員会(JOC)にエンブレムの使用停止を求め、8日以内に同意しなければ法的措置をとるとする書簡を送付。
引用:産経ニュースデジタル
当初、オリビエ・ドビ氏は、寝耳に水の状態だったようです。キッカケは、日本のマスコミの取材でした。ベルギーのデザイナー、オリビエ・ドビ氏は、この一件でかなり有名になりました。日本以外の欧州地域でも、この五輪デザイン盗作疑惑の報道が大々的に報道されたからです。
原案公表せず
この動きを受け、大会組織委員会は『デザインは盗作ではない。何も問題ない』と強気の姿勢でした。また、日増しに高まるエンブレムの原案の公表を頑なに否定してきました。
以下が、その記事になります。
2020年東京五輪のエンブレム選定で審査委員代表を務めたグラフィックデザイナーの永井一正氏が、佐野研二郎氏がデザインしたエンブレムの原案はベルギーの劇場のロゴに似ていなかったと証言して応募作品や選考過程の公表を訴えたことに対し、大会組織委員会は26日、「劇場のデザイナー側と訴訟中のためオリジナルの作品を公表することはできない」との見解を示した。
劇場のデザイナー側は佐野氏の作品は盗作だと主張し、国際オリンピック委員会(IOC)に使用差し止めを求めて地元裁判所に提訴した。永井氏は応募した全作品の公開を求めたが、組織委は「他の作品を含めて公開する予定はない」とコメントした。
出典:スポーツ報知
この時点ではまだ、大会組織委員会は強気の発言を繰り返しており、選考過程に不備はなかったという発表でした。組織委員会は、いわばエリートと権力者の巣窟です。不備を認めることになれば、自分たちの経歴までをも汚すことになりかねません。彼らが守りたいのは、佐野氏ではなく、己自身なのでしょう。
今は彼らの思惑と利害が一致していますが、これから先はどうなるか分かりません。
むしろ、どんどん状況は悪くなっていくでしょう。
佐野氏が手掛けた他のデザインに飛び火
サントリー・オールフリーのキャンペーンに使用されていた佐野氏デザインのトートバッグ30種類の中の複数が、別のデザイナーによってすでに発表されていたデザインと類似しているという疑惑。8月5日のエンブレム会見終了後、わずか数日後に勃発した問題です。
これらを受け、8月13日にサントリーは30種類中8種類のトートバックを配布中止とし、謝罪をしました。これは「佐野氏側の依頼を受けてのこと」とされています。さらに、佐野氏は自らが運営する「MR_DESIGN」のホームページに釈明文を掲載しました。
釈明文に書かれていた内容は、以下のようなものです。
「(スタッフによって)第三者のデザインをトレースしたことが判明いたしました」
「今回の事態は、社内での連絡体制が上手く機能しておらず、私自身としてのプロの甘さ、スタッフ教育が不十分だったことに起因……」
「なお、東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムについて、模倣は一切ないと断言したことに関しましては、先日の会見のとおり何も変わりはございません」
出典:Yahooニュース
しかし、問題はこれだけには留まりませんでした・・・。
他のデザインについても、数々の疑惑が持ち上がったのです。しかも、佐野氏の発表では、「スタッフが勝手にやったことだ」というような印象の発表でした。いくら部下が不始末をしたとはいえ、それを監修し、Goサインを出したのは、責任者である佐野氏自身です。これには、多くの国民の疑惑と不信が一層広まることになりました。
この時点で、この五輪エンブレム問題は、ますます混迷を深めていることになります。
一転して、原案を公開したが・・・
デザイナーの佐野研二郎氏(43)が制作した2020年東京五輪の公式エンブレムが、ベルギーの劇場のロゴなどのデザインに似ていると指摘された問題で、大会組織委員会が28日に公開した佐野氏のデザインの原案に対して、インターネット上で、「パクリの元ネタがあった」などと批判が噴出している。
「元ネタ」とされていのは、13年11月に東京・銀座で開催された、タイポグラフィ(活字を用いて組版、印刷、製本などを行う技術)の巨匠「ヤン・チヒョルト」の展覧会で使用されたロゴ。元ネタで使われている三角と長方形と円のパーツの形や配置は、原案と似ている。
色は、原案の円が赤だったのに対して、元ネタは黒となっている。
またネット上では、当時、佐野氏とみられる人物が「展覧会いくべしいくべし。ヤン・チヒョルトもやばい」などとツイートした画像が掲載された。佐野氏は14日、複数のデザイナーとともにデザインしたサントリーのキャンペーン賞品が模倣だったことを認めている。今回の「元ネタ発覚」について、ネット上では「パクリ常習犯!」、「エンブレム白紙撤回しろ」などと抗議の声が相次いでいる。
当初は頑なに原案の公開を否定していた組織委員会ですが、ここにきてようやく原案を発表する運びとなりました。正直、対応が後手後手になっている感じがあります。もっと早く、対応できていたならば、ここまで批判も大きくならなかったのではないでしょうか・・?
しかし、この原案公開がさらに混迷を深めることになりそうです。
組織委員会が対応すればするほど、悪い結果になっているように思えます。
驚くほど酷似しているデザイン
ヤン・チヒョルト氏とは・・・。タイポグラファー・カリグラファーであるドイツ人のデザイナーらしいです。生い立ちのほどは、詳細にはなっていないようだが、独創的な書体デザインで有名な人のようです。デザイナーの世界では、名を馳せた人物なのだろうか・・・??どうやら、彼のタイポグラファーの個展が開かれたらしく、その場所に佐野氏もその個展に行っていたようです。
それだけなら、何も問題にならないのですが・・・。
だが、ヤン・チヒョルト氏のデザインと今回発表された佐野氏のデザインが驚くほど酷似しているです。上記の写真を見てもらうとわかるのだが、完全にソックリ・・。ヤン・チヒョルト氏はすでに故人であり、彼のデザインの権利関係はどうなのかは分かりません。しかし、今回の五輪デザインは『佐野氏がデザインしたのもの』として、発表されています。
これは倫理的に、もはやアウトでしょう。
この新たな問題を受け、ネット上では、かつてのSTAP細胞の件と同列に語られるようになっています。私も、STAP細胞の時と同じような感覚だと思います。ここままいけば、佐野氏自身や、スタッフ、組織委員会の誰かが、致命的な結果になりかねません。
誰かが命を絶つ前に、この問題を何とか食い止めることはできないのでしょうか??
テレビを超えたネット社会の発展
今回の問題は、一昔前だったら、絶対に問題になっていなかったでしょう。今と昔とで決定的に違う点は、ソーシャルネットワーク(SNS)の発展にあると思います。現在ではTwitter、Facebook、LINEなど、多種多様なSNSが登場し、猛烈な勢いで発展しています。
いつでも、どこからでも、インターネットにアクセスできることは、私たちの生活を大きく変えました。テレビも、家電も、車もインターネットに繋がる時代なのです。確かにインターネットは大変便利なのですが、一方で、下記のような様々な弊害も起こっています。
- 不確定な情報が、あっと言う間にSNS上を駆け巡り、拡散してしまう
- インターネット上から不正侵入され、データが破壊・改ざんされる危険性
- 世代間によって、情報格差が広がってしまった
- 情報リテラシー(使いこなす能力や知識)の問題欠如
これは、メディア(新聞やテレビ)でも同じようなことが言えます。しかし、インターネット上では、『不特定多数の個人』が、その情報を安易に発信してしまう点で影響力の度合いが違っています。
今までの常識が通用しない、組織委員会の誤算
組織委員会のメンバーを見てみると、かなりのご年配の方が名を連ねています。SNSなどのインターネット事情には『疎(うと)かった』のではないでしょうか??狭いデザイナーの世界、きっと今までも、仲間内でも『持たれ合い』などの関係が続いていたのでしょう。
また、このような狭い世界では独特の『村社会』が出来上がります。
身内に有利な選考をする、判定を下す、こういったことは昔から水面下で延々と行われていたことだと思います。結局、有名デザイナーとなり、巨額の仕事を勝ち取るためには、デザインよりも人脈ということです。
(デザインに限らず、どこでもそうだと思いますが・・・)
組織委員会は、ネット社会の影響力を計算出来ていなかったように思えます。それは、今までの会見からみても明らかです。今までのように、身内の慣れあいが当たり前のように続いていた時代を経た人たちは、苦い経験となったのかもしれません。これからは、STAP細胞の事件の二の舞にならないなように、ネットの専門家も交えて、対策を立てていく必要が求められる時代です。
最後に、ヤン・チヒョルト氏の指摘はまだ、報道にはなっていませんが、時間の問題だと思います。もはや佐野氏の責任を超えて、国家レベルの問題にまで発展した五輪エンブレム問題。
果たして、どうなっていくのでしょうか?
事の推移をただただ見守っていくほかありません。