Photoshopをより深く知るためには参考書の存在が欠かせません。基礎知識や素材など関連書籍はいくつかありますが、合成(マニュピレーション)や3Dなどの書籍はほとんどありません。あっても英語版の書籍なので、英語が出来ないと苦労するでしょう。
また、プロが使用するような高度なテクニックなどの書籍もかなり限られます。しかし、これらの書籍から得られるテクニックの恩恵は絶大だと思っています。しっかり学べば自分にとって大きな力になると思います。
今回はそんな数少ない書籍でもある「Photoshop レタッチ&合成の秘訣」をレビューしたいと思います。
書籍の特徴
「Photoshop レタッチ&合成の秘訣」の特徴は以下の通りです。
- データサンプル付き(サイトからダウンロード / パスワードあり)
- チャプター形式のチュートリアル。
- それぞれのチャプターは独立している。
- 全編フルカラー。
- エフェクトやライティングのコツの解説。
- 基本的な操作説明はなし。
- ディスク付属なし。
全編フルカラーで構成されており、チャプターごとに分けられています。それぞれのチャプターは独立しているので、気になる箇所から読み進めることができるでしょう。また、サンプルデータをダウンロードして、実際に試しながら練習することができます。
ただし、基礎知識や基本操作はざっくりとしか説明されていません。あくまでも基本操作が出来るという前提で読み進めるための書籍です。
それでは、ざっと書籍の中身をレビューしていきましょう。
書籍の目次
「Photoshop レタッチ&合成の秘訣」の書籍は、全12のチャプターで成り立っています。かなりのボリュームであり、非常に読みごたえがあります。何より、全編フルカラーなので見やすいです。
大抵の場合、画像にはレイヤーが見えるように付けられているので、チュートリアルを追いやすくなっています。下記は本書の各チャプターです。
Chapter 1 選択と切り抜き
- クリック選択ツールと境界線の調整
- レイヤースタイルで素材の品質を向上させる
- 余計な輪郭を除去する方法
- クイックマスク
- 切り抜きのトリック
- 高度なブレンド
- 色域指定
- ペンツール
- チャンネルを使った選択
Chapter 2 グレーの力
- 描画モードによるが合成
- テクスチャの活用
- 覆い焼きと焼き込みのコツ
- 場所の変更
- 凹みやキズの追加
- 簡単に腹筋を割る方法
- PHOTOSHOPの逆光
- 目を強調する
Chapter 3 照明効果(ライティングエフェクト)
- 世界でもっともシンプルな照明効果
- 終わりなきライティング
- グラデーションライティング
- 光線
- 地平線の光
- リムライトの模倣する
- 反射光
- 影
Chapter 4 特殊効果(スペシャルエフェクト)
- 昼を夜に変える
- カートゥーン調 / 絵画調エフェクト
- 破片と埃
- 雪のシーン
- 雨の追加
- 濡れたルック
- モノクロ変換
- 血のりの追加
- 腫れの追加
- ディテールエフェクト
Chapter 5 合成に役立つ小技&ヒント
- リアルな地平線の作成
- 草むらに合成する
- 影
- 色合わせ
Chapter 6 ポートレート
- RAW変換とレタッチ
- 非破壊レタッチ
- 背景に色を追加する
- スポットライトの追加
- 背景色と描画色を一致させる
- 葉巻に火をつける
- 絵画調の質感エフェクト
Chapter 7 タフガイ
- RAW変換とレタッチ
- 非破壊レタッチ
- テクスチャを利用した背景
- 影の追加
- シンプルな照明効果
Chapter 8 サイの合成
- 風景の作成
- サイの追加
- 砂煙の作成
- 仕上げ
Chapter 9 おとぎ話のワンシーン
- 舞台裏
- ミニチュアの部屋
- 玩具の追加
- 影の追加
- 子供の追加
- 昼から夜へ
- 衣装棚の光
- 仕上げ
Chapter 10 風景のレタッチ
- Camera RAWの使い方
Chapter 11 暗殺者(アサシン)
- ライティングの設定
- Camera RAW
- 構図
- モデルの選択
- 覆い焼きと焼き込み
- ジャケットのレタッチ
- 背景の追加
- 移動可能なビネットの追加
- サングラス
- 仕上げのレタッチ
書籍の詳細情報
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目次は見やすいか
一番初めにある目次は画像付きで見やすい目次になっています。この書籍の特徴として、それぞれのチャプターはチュートリアル形式の実践で解説されていることです。エフェクトを効果的に活用するテクニックや、ポイントなどが押さえられています。
各チャプターは独立しているため、基本的にはチャプター1からじゃなくても気になる箇所から読み進めることができます。
チャプターの構成レビュー
書籍の内容を「ざっくり」とレビューしていきたいと思います。
すべてのチャプターは「文章:40%」「画像:60%」といった感じで構成されています。私的にはこちらのほう読みやすいので、好感が持てます。挿入されている解説の画像をみて、何をしているのか分かるようであれば読み進めるのに問題はないでしょう。
逆に画像が何を意味しているのか理解出来ない人は、基礎知識と基本操作をあまり覚えていない状態だと思うので、読み進める上で「つまづく」可能性があります。そのような場合は、基本操作をしっかり解説しているような書籍を手元に置いて進めていくほうが良いでしょう。
選択と切り抜きのテクニック
Photoshopを少しでも触ったことがある人ならば、こんな経験があると思います。「髪の毛が上手く切り抜けない」「頭や顔の周辺に余分な背景が入ってしまう」など、なかなか上手くいかないことがあると思います。
まとまった髪なら良いですが、バラけているような髪だとなおさら難しく感じますよね。
本書では「どうやったらこのような髪の毛を綺麗に切り取れるか」「ライオンのたてがみを楽に切り取るにはどうしたら良いのか」など、分かりやすい事例を交えて詳細に解説しています。切り抜きで悩んでいる人は、非常に参考になるでしょう。
ブレンド(合成)のテクニック
簡単そうで難しいのがブレンド(合成)の方法です。異なる画像を並べただけでは、違和感しか残りません。「どうすれば背景と馴染むのか」「違和感なく周りの風景と同化させるにはどうしたら良いのか」など、目から鱗のテクニックが記載されています。
私もこの本を読んでいて、ビックリしたものです。「えっ?! そんな方法があったの?」と言った感じです。
切り抜きとチャンネルのテクニック
Photshopにはチャンネルと呼ばれる機能があり、RGBによって画像を操作することができます。本書ではチャンネルの使い方とポイントが丁寧に説明されています。複雑で切り抜けないような形でも、チャンネルを使えば簡単に実現できます。
私も当初はペンツールと自動範囲選択を主に使っていましたが、チャンネルの使い方を覚えてからは、切り抜きの精度が上がりました。特に森など、複雑なカタチを切り抜くためには、このチャンネルを使った方法が欠かせません。
覚えると、切り抜きがすごく楽になると思いますよ。
ライティングエフェクトのテクニック
ライティングエフェクトとは、簡単に言うと「光の表現」のことです。物体に光が反射したり、光に動きを付けることで幻想的な雰囲気などを表現することができます。ここでは、アイアンマンのモデルを使って、ライティングエフェクトを学ぶことが出来ます。
Photoshopではこの光を使ったアート作品が結構たくさんあります。幻想的な雰囲気のアートを作りたい、煌くような雰囲気を作りたいといった場合に役立つでしょう。
とゆーか、私はこのアイアンマンのアートを作りたくてこの書籍を購入したも同然です。
上手く馴染ませるためのテクニック
これも悩んでいる人が多いと思います。画像を手く馴染ませることは、アートの質を高める大切な要素だといえます。とはいえ、色も違う、明るさも違う画像を違和感なく馴染ませるためには、それなりのテクニックが必要になります。
本書ではモデルと背景を使用して、どのような色調補正をしたら上手く馴染ませることができるのかを丁寧に解説しています。しかし、理解するためには前提となる基礎知識が必要です。初心者の人はちょっとキツイかもしれません。
Camera RAWのテクニック
私もよく利用しますが、Photoshopの仕上げにはCamera RAWが欠かせません。とはいえ、Camera RAWのチュートリアルなどはインターネット上でもなかなかお目にかかれません。ひょっとしたらレタッチ関連の書籍などで詳しく解説しているのかもしれません。
Camera RAWに興味のある人はこの機会に学ぶことができると思います。私自身も非常に参考になりました。
評価と分析
「Photoshop レタッチ&合成の秘訣」の評価と分析は以下の通りです。
項目 | 評価 |
---|---|
ボリューム | 5 |
分かりやすさ | 4 |
読みやすさ | 4 |
価格 | 3 |
対象者 | 中級者以上 |
サンプルデータ | あり |
【Good】本書の良かった点
私個人の感想としては、購入して非常にためになったと思っています。特に、今まで漠然としていた操作がハッキリ分かったことや、プロのテクニックが学べた点がすごく良かったです。Youtubeなどで学ぶのも良いですが、本だと詳しく解説が載っているため、理解がしやすかったです。
また、サンプルデータが付けられている点も良かったですね。これが「ある」・「なし」じゃ雲泥の差ですからね。実際に画像を使って試しながら進めることが出来たので、理解も深まったのだと思います。
ボリュームも多いので総合的には満足できる書籍でした。
【Bad】本書の悪かった点
これは翻訳上しかたがないのですが、やはり価格が高いことでしょうか。5千円近い値段をどう考えるかですね。もちろん、もっと高い書籍はたくさんあります。私的にはこの書籍の内容ならかなり安いほうだと思いますが、人によっては躊躇する値段ですからね。ここら辺は個人の判断になりそうです。
また、初級者は買わないほうが無難だと思います。初級者の人はテクニックが向上するというよりも、読み進めるほうが大変かもしれません。もちろん買っても良いのですが、基礎的な操作がある程度できるようになった上で、購入したほうがより効果が高くなります。
どうしても購入するなら、基本操作や専門用語を解説しているような書籍と一緒に読み進めるほうが良いと思います。せっかく買っても、無駄になっちゃいますからね。
あとがき
今回「Photoshop レタッチ&合成の秘訣」の書籍レビューでしたが、私はまだまだ多くのPhotshopの書籍を持っています。Photoshopの書籍だけでも、おそらく英語版も含めると40冊以上あると思います。またPhotoshopに限らず、アンリアルエンジンの専門書やAfter Effectなどの専門書も多数あります。
私は昔から本が好きだったので、参考書には惜しまずに投資してきました。とにかく気になる本があれば、片っ端から読んでましたね。逆に小説のような本はすごく苦手なので、ほとんど読んだことがありません。
今では夜寝る前に、何らかの参考書を読むのが日課になっています。Photoshopはどんどん進化しているので、きっとこの先、たくさんの書籍が登場すると思います。
楽しみです。
このレビューが参考になれば幸いです。