ソニー・コンピュータエンタテイメント(SCE)が、インターネット経由でゲームの情報を処理できるクラウド技術を活用したゲームの配信サービス「プレイステーション Now(ナウ)」を始める計画を発表しました。今後、これまで家庭用ゲーム機しか対応していなかった本格的ゲームが、スマートフォンやタブレット端末などでも楽しめるようになります。
さて、クラウドゲームは、販売不振が続く家庭用ゲーム機を再び浮上させるカギとなるのでしょうか?
クラウドが持つ魅力
「クラウド」という言葉を聞いたことがありますか?
これまで、パソコンで文書などを作成するには、まずインストールされたアプリケーションソフトを起動、作った文書ファイルはハードディスクの中に保存するというのが、一般的な作業手順です。
「クラウド」(またはクラウド・コンピューティング)とは、こうした常識をガラリと変える、新しいコンピュータの利用スタイルとなります。パソコンのソフトの代わりに、インターネットのサーバーを使って作業ができて、作成したデータもインターネット上に保存できるのです。
つまり、パソコンで行っていたことを、まるごとインターネットにまかせてしまおう、という技術です。
クラウドが主流になれば、今までのようにパソコンに大量のアプリケーションをインストールする手間もいらず、容量も圧迫されません。たとえパソコンが故障しても、インターネットに繋がる環境であれば、すぐにでもアプリケーションを使用することができるます。
現在ではクラウド技術を利用したサービスも数多くありますが、残念ながらその技術はまだ浸透していません。
しかし、クラウドが主流になれば、パソコンの利便性が大幅に上昇することは間違いないでしょう。
SONYが本気を見せる!
「今までプレイステーションの世界に触れる機会がなかった人たちにも手軽にゲームを楽しんでもらいたい」。米ラスベガスで7日開幕した世界最大の家電見本市「インターナショナルCES」で、SCE社のアンドリュー・ハウス社長はこう強調した。
サービスの詳細はまだ未定だが、今年夏から米国で先行開始し、その後日本で展開する計画。
一定額を払えばさまざまなゲームが利用でき、お気に入りのゲームを期間限定の「有料レンタル」として楽しむことも可能だ。お茶の間で遊んでいたゲームの続きを、外出時にタブレット端末などで楽しめる。昨年末に欧米で先行販売した新型機「PS4」のほか、PS3などでも遊べる。インターネット接続できるテレビでも配信を受けられる。
Sonyは、主力のエレクトロニクス事業は赤字続き。ゲーム事業を、携帯電話などと並ぶ再建の柱に据える。しかし、PS3は思うようにヒットせず、携帯型ゲーム機「PS Vita」も勢いを欠く。2013年の家庭用ゲーム機とソフトの販売額は前年から1割減の4089億円であり、6年連続の縮小だ。
スマートフォンの台頭で空き時間に遊びたい人は安価なオンラインゲームを利用。高性能化したゲーム機は価格が上昇し、熱心なファン向けの機器と化してしまった。この結果、ソニーの思惑とは裏腹にゲーム事業の営業損益は、13年9月の中間連結決算で156億円の赤字となっている。
市場を制するカギはクラウド
「スマホのゲームに親しんだ人たちが本格的なゲームを始める入口にしたい」。SCEの担当者はプレイステーション ナウの狙いをこう話す。クラウド技術を利用したゲームは、家庭用ゲーム機でSonyと競合する米Microsoftも投入するなど、業界では注目され始めている。
狙いは「本格的なゲーム機までは不要だが、スマートフォンよりは、もっと遊びたい」という人たちだ。ソニーには本格的なゲームソフトが豊富にあるのが強みだと分析している。
一方、PS4は欧米で累計420万台の販売を突破。「爆発的」とするPS4にクラウドゲームを加えて、ゲーム事業を再び軌道に乗せる青写真を描く。ゲームの配信サービスは将来的には他社製品にも広げていく方針だが、「どのぐらい思い切って他所にゲーム配信の門戸を広げ、ソフトビジネスに転換できるかがカギ。
ハードだけではSonyのゲーム事業が生き残るには難しい」と専門家からは指摘されている。